- Marathon -

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 Marathon、Marathon2、Marathon Infinityは、1994年〜1996年にかけて、Haloのヒットで知られるBungie Software(現Bungie Studios)が制作した3Dシューティングアドベンチャーゲームです。Macintosh向けのゲームとして開発・発売されましたが、つい1、2年ほど前、Windows版と共にプログラムのソースコードまで含んだ完全フリーウェアとして公開され、誰でも楽しむことができるようになりました。

 ゲームとしては、いわゆるFPS (First Person View Shooting)……一人称視点で、銃を持ってエイリアンを撃ち殺していくゲームですが、そこら辺の洋ゲーとは完全に違う作品です。Marathonシリーズの特徴としては、爽快感溢れるネット対戦、Macintoshというハイレベルな環境を活かした美しいグラフィック、敵を撃った時の手応えに伴う快感など様々ですが、なんと言ってもステージ中随所に用意されたターミナルを通じた〔ストーリー〕に他のゲームと一線を画す深みがあると言えます。
 Marathonシリーズは全作ストーリーが完全に繋がっており、単体でのプレーは正直厳しいです。しかし、それ故に、3作に渡る長い物語は比類なき歯応えを持っており、その重さ、難解さは、とてもではないですが理解しようという情熱を持たない人が受け入れられるものではありません。そう言った意味で、Marathonシリーズは人を選ぶゲームかも知れません。

Marathon

 Marathonの舞台は西暦2800年。火星のダイモスを改造して建造された宇宙船マラソンは、新たな星系を目指している途中、突如として謎の船団に襲撃され、激しい攻撃を受けます。
 主人公は訳の解らないままマラソンのドックに到着し、ターミナルを通じてマラソンを管理する3体のAIの内の一つ、女性型のリーラと出会います。彼女から、他の2体のAI……デュランダルとティコとは連絡が取れないこと、敵はプフォールと呼ばれる他種族を奴隷にしながら勢力を拡大している異星人である事を告げられ、主人公は彼女と共にマラソン解放のために戦います。
 その後、プフォールと戦う内に、暴走状態のデュランダルが登場し、次第にリーラから主導権を奪い主人公にコンタクトを取ってきます。
 暴走状態にあるデュランダルは何をしたいのか? 何故デュランダルは暴走したのか? そもそも、主人公……自分自身はいったい何者なのか? 絶望的な戦況の中で、物語は展開していきます。

 基本的には、ターミナルでAIからのメッセージを読みプフォールを倒しながら、25あるステージをクリアーしていきます。デュランダルが電波をゆんゆんさせながら哲学を通じて新たな人格を形成していったり、ターミナルから主人公自身の正体の謎を解く鍵を手に入れたり、プフォールの船に乗り込んだり、プフォールの奴隷であるスフト族が反乱を起こしたりと、めまぐるしく展開していきます。

 個人的に嬉しいのが味方の存在です。主人公は基本的に一人で戦うわけですが、途中からは非戦闘員とはいえマラソンの乗組員が多数マップに現れますし、スフト族は反乱を起こした後は共に戦ってくれます。あんまり頭が良くないので、主人公の近くに敵がいても問答無用で撃ってきますし(巻き添えでこちらもダメージを喰らいます)、間違って誤射すると切れて反撃してきたりしますが(;´Д`)、1994年の時点でここまで共闘感を出しているゲームは滅多にないんじゃないでしょうか。
 こうした「味方」の要素は、MythやHaloといった後の作品でも非常に重要視されているようです。主人公も敵も一人で戦っているのではなく、世界があって、それぞれの集団に属し、それぞれの信じる戦いを繰り広げている。そういった感触が伝わってくるのです。この感触こそが、Bungieのゲームが持つ最大の特長だと、僕は思います。

Marathon2

 Marathon2では、Marathonの17年後が描かれます。プフォールを一時的に退けたデュランダルは「俺は宇宙の終焉を超えて神になるヽ(゜Д゚)ノ」という電波な理想を達成するため、主人公を連れ、スフト族の故郷で現在はプフォール達の流刑星になっているロウォンに辿り着きます。元マラソンの乗組員らと共にプフォールを倒しながら、銀河の全ての文明の基礎となったと言われる先史文明〔ヤロ〕、そしてスフトの失われた氏族の秘密を解き明かしていきます。

 ゲームの進め方はMarathonとほぼ同じです。Marathon2は後のBungieのゲームの原点とも言える作品で、室内が多かったMarathonとはうって変わって、ロウォンの遺跡を中心とした心が解き放たれるような空の見える空間での戦いがメインとなります。ゲームとしての爽快感や快感も増し、ラスト付近での大逆転劇もまた爽快です。意味深だった前作のエンディングとは違い、かなりのハッピーエンドとなり、気持ちよくゲームを終えられます。僕の知る限り、BungieのゲームでここまでめでたしめでたしになったのはこのMarathon2だけです。

Marathon Infinity

 Marathon Infinityでは、Marathon2の並行世界、「もしこうだったら……」の世界が描かれます。そのストーリーは時空を行ったり来たりする極めて複雑かつ難解なもので、Marathon2のハッピーエンドもぶち壊すことから、嫌っている人もいるようですが、今作があったからこそMarathonのストーリーに本当の深みができたのだと思います。
 物語は、Marathon2のクライマックスでプフォールが恒星破壊装置を使用したところから始まります。Marathon2では、この恒星にヤロが封じたという〔混沌の存在〕は解放されなかったのですが、Marathon Infinityではその存在が恒星崩壊と共に解放され、銀河を破壊し尽くそうとしています。この歴史を変えるため、ヤロは時空を超えて主人公とコンタクトを取り、主人公は過去へと旅立ちます。そして、主人公やエイリアン達の精神世界、時空の狭間、ロウォンの大地、先史文明ヤロの宇宙ステーションなど、とても幻想的で美しい光景の中で戦いを繰り広げていくことになります。

 僕が最初にプレイしたMarathonが、このInfinityでした。もちろんストーリーは理解できませんでしたが、ゲームとしてのおもしろさ、グラフィックの美しさ、サウンドの素晴らしさ、そしてその世界に魅せられ、あっという間にファンになってしまいました。
 悪趣味な話ですけれど、途中、人間の敵役に回ってしまうストーリーになり、人間を好き放題撃ち殺せます(゚∀゚)。核融合ピストルやグレネードでぶっ殺すとこれがまた勢いよく人間が ボンッ って爆発するのですよー lol。楽しいwwwwwwっうぇww


 一般的な日本製ゲームや、Bungieの後のゲームのような演出シーンはなく、ある意味質素で地味な感じもするゲームです。しかしそれでも魅力は沢山あります。作り込まれた世界設定があり、それを元にゲームが構築され、その世界に入り込んで爽快なアクションと共に壮大な物語を体験し、パズルのように物語の断片を頭の中で組み立てていく。これは他のゲームでは得られない楽しさです。
 FPSの爽快感と知能的なストーリーが合わさった、まれに見る傑作といえるでしょうっ。